訪問記

□日本の四季の豊かさとともに暮らす生活
この住まいは13年前に竣工したお住まいです。敷地の高低差を
利用し、玄関から半階上がったところにリビングを設け、さら
に半階上がったところにダイニング、もう半階上がったところ
にオープンな個室スペースを設けています。
リビングとダイニングと個室スペースの三つのレベルのフロア
は吹き抜けでつながっており、ワンルーム空間となっています。

今回、訪問の際にご夫人が言っておられたことが印象的で、設
計をさせていただいた私どもにとってはこの上ない喜びでした。
「この家は、どこにいても、南、東、北の三方の窓が見ることが
でき、四季毎に微妙に変化する太陽の光、外の景色、たとえば北
側の中学校の桜、風などが日本の四季の豊かさを感じさせてくれ
ます。また、満月のときは台所の窓の正面に月の出が見られ、驚
きました。」と喜んでおられました。

珪藻土は経年変化が少ない素材
内装壁に使った珪藻土は13年たってもまったく変化のなく、しっ
かりと生活を包んでくれていました。その存在感は年を経てます
ます堂々としていました。外壁の褪色もいまだほとんどありません。
□自然体の生活
夏の昼間は窓を開放し、風を通し、クーラーは使用しない、との
ことでした。これには建築的な工夫があります。風の入り口と出
口がつくってあることはもちろんですが、もう一つ、吹き抜けの
最上部に窓をつくり、たまった熱を排出できる構造としているこ
とです。夜だけは窓を閉じるので、クーラーを使用されている、
とのこと。冬は、床暖のみ使用し補助暖房は使用しない、ちょっと
寒いと感じるときは重ね着をして生活をされる、とのことでした。

□お客様の生活の知恵
上記の生活スタイルは、お客様が、なるべく自然に負荷をかけな
いように、自然と自分たちの生活の折り合いをつけておられる、
ということです。その結果として、自然とともに豊かな生活がで
きることになります。
生活を自然から切り離し、住居の中だけに人工的な快適空間をつ
くることもできます。しかし、このお住まいのように自然ととも
に暮らし、自然の豊かさを享受する生活は、今後さらに見直され
ることでしょう。そして、そんな生活が可能な建築的な工夫がま
すます重要になってきます。  才本